地方企業が東京の広告代理店に運用を頼んだ時、あまり運用が進まないと感じたことはありませんか?
もちろん東京のマーケターが地方に比べて劣っている訳ではありません。
私は東京の広告代理店に10年間在籍しており、ASP、広告運用、メディア運用、SEOなど一通り携わりましたが、やはり地方と大都市圏ではWebという分野においてかなりの意識格差があると思います。
ここでは東京の広告代理店の誤解と、地方企業の意識について説明したいと思います。
「東京の代理店と合わない」という地方企業の声は多い
実際に私たちは東京の広告代理店に運用を依頼している地方のお客様からよくご相談頂く機会があるのですが、その中でも特によく耳にするのが「東京の広告代理店とウチの会社なんか合わないみたいなんだよね」といった言葉です。
前述の通り、東京のマーケターの方が運用機会に恵まれていたり、より広告に没頭できる環境が備わっている場合が多いので、運用技術やプレゼン能力も都内の企業の方が長けていると思います。
では、なぜクオリティの高い提案ができる東京の会社が、受注率が悪かったり地方の広告代理店にリプレイスされたりするのでしょう。
地方のWebはあくまでサブ事業
地方企業はWebを使用しない事業を収益源としている確率がかなり高いです。
言ってしまえばWeb広告を展開せずとも収益の柱として事業はすでに成り立っている状況です。
しかし、周囲からはWebの広告に取り組むべき、これからはWebの時代、などWebを利用したマーケティングで売上を上げている企業の情報だけは入ってきます。
例えば「平成30年特定サービス産業実態調査」では
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/tokusabizi/result-2/h30.html
平成30年の日本で一番面積の小さい県、香川県全体の広告費売上高は30,486万円でした。
内、インターネット広告は877万円。
新聞やテレビなどを含めた香川県の広告全体の2.8%ほどがインターネット広告の広告費となっています。
全国には2%を切る県も非常に多く地方の中では割と頑張っているのではないかという印象です。
では、東京はどのような割合なのでしょうか。
平成30年の東京全体の広告費売上高は5,255,718万円
内、インターネット広告は1,139,465万円。
東京都の広告費全体の21.6%がインターネット広告を占めています。
平成30年の時にはまだテレビ広告の方が売上高がありましたが、全体の中で2位の売上高です。
現在はWeb広告がテレビを抜いたというニュースが発表されたり、全国でWebの重要性が非常に高まっていますよね。
平成30年以降は特定サービス産業実態調査が終了になってしまったので、その後の詳細な動向はわかりませんが、今はかなりの割合をインターネット広告が占めていると推測されます。
東京と地方において、まず大きな差というのが上記のインターネット広告の割合です。
東京にはWebマーケティングが一般化しており、多くの企業がWebでの販促を求めます。
そこにかける予算も比較的大きい金額で、Web広告のみ広告を出稿しているという企業も少なくありません。
一方、地方はというと未だに新聞、テレビ、公共交通機関の看板などの広告、チラシ、DMなどが大きな金額を占めています。
その中の過剰金をWebの予算に回すというケースが多く、Web広告をメインで出稿している東京と、余力で運用していながらも大幅な期待を寄せている地方企業には大きな意識の壁があります。
この意識をすり合わせて規模を増やしていくことが非常に重要なポイントです。
地方企業ではWeb担当者がいることは稀
東京ではWebマーケティングは多くの企業で必須となっているので、多くの場合はディレクター、マーケター、デザイナーなど部署や役割でWebの担当者が細分化されています。
しかし、地方の場合ではWebを専業で担当している方は非常に少ないです。
社員や役員、経営者などが兼任してWebを担当するということが多く、常にWebだけと向き合っている訳ではありませんので、もっと根本的なお話からスタートする必要があります。
・Webで売上をアップさせる方法は
・うちは何をまずするべきか
・今後はどのような展開をするのか
このような経営コンサル的なお話で進捗していく事が非常に多いです。
東京ではWeb担当者と代理店の間で共通の認識があり、CPA(獲得単価)、CTR(クリック率)向上など広告費を有効活用するための施策を打ち合わせる事が多いかと思いますが、地方ではそれだけでなくSNSを活用したマーケティング方法、SNS広告を利用したキャンペーン展開、リスティングまでの導線設計など、単一の媒体で運用する以外にも多くのマーケティングの知識が必要となります。
最初から専門用語は使わない
私たちマーケターはCPA、CVR、CTR、ROAS、ROIなど相手も知っていて当然のようなスタイルで接することが往々にしてあると思うのですが、地方はWebを専門で担当している方は稀です。
そのため広告などの専門用語に対しても「獲得人数1人に対しての広告費用」と噛み砕いて説明することが重要です。
地方のお客様がWebの施策に本気で打ち込むことができるかは、私たちマーケターにかかっているといっても過言ではありません。
Webに対しての興味を持ってもらえるように、またWebについての知識を増やして頂けるように進めていくことが最善です。
今でこそ周りが使っているからというのもありますが、ビジネス用語を使う機会って増えていませんか?
「アジェンダを配布します。○○はペンディングするので○○の件はエビデンスの提出をお願いします。」
さすがにこのように多用する方は少ないと思いますが、少し抵抗を感じますし、新入社員の方は何を言っているのかさっぱりわかりませんよね。
それと同様に専門用語を、さも「知っているでしょ?」というスタンスで普通に言われると抵抗を感じるのは当然です。
予算でどうしても差がついてしまう
先程、地方はWebはサブ事業であると説明しましたが、東京の広告代理店の場合、月間予算1,000万以上のクライアントは少なくありません。
5,000万~1億の予算を投下するクライアントもおり、運用費が20%と仮定すると200~2,000万円の利益を広告代理店は受け取ることができます。
しかし、地方企業の場合はそこまで予算をかけることができない環境が多いので、5万~10万円の少額で出稿するケースも少なくありません。
そのような場合、担当者のタスク管理としては規模の大きい予算のクライアントを重視するのは当然だと思います。
大都市圏でも地方でもマーケター、営業はより細やかなサポートを求められますが、絶対的な予算額に差がある場合、地方にまで手が回らなくなってしまうことがあり、それが「東京の広告代理店とはなぜか合わない」という意識を生み出してしまいます。
それでも地方のWeb施策を続けるべき理由
ここまでの話で地方企業は広告予算も少なく、総合的なコンサルが必要不可欠という結論になりました。
これだけ耳にすると地方のWeb施策をするメリットを見受けられない方も多いかと思います。
しかし、地方企業には地方ならではの強みがある企業も多く、Webと事業が潜在的にマッチする企業も数多くあります。
広告は日本以外にも配信することができますし、全国の新規顧客の獲得、海外の新規顧客を獲得できるようなポテンシャルを秘めている可能性があります。
広告の運用だけでなく総合的な視点から徹底的に企業に寄り添ったサポートをすることによって、お互いに多大な恩恵を与え合うことのできるWinWinな関係へ至ることができます。
広告としてはまだまだ未熟だからこそ、できる施策も数多くあります。
長く関係性を築けるようなお取り組みを目指してみてください。